宇宙についての独白

 宇宙が誕生したのは、今から百三十七億年前という、気が遠くなるくらい昔のことだということを聞いた。その途方もない時間の中で宇宙は大きく成長し続けてきたという。その成長は今も止まらず、広がり続けているらしい。だからその話を聞いて、僕は思ったのだ。百三十七億年間も成長している宇宙という存在は、もしやとても大きな生命なのではないか。僕たちのいる地球は体の中にある菌の集合体のようなもので、僕たちはそこに住んでいるひとつひとつの菌なのではないか、と。

 百三十七億年も昔から宇宙があったというのは本当なのかなんて僕にはわからないし、百億年とかはいかないまでにしても、一億年くらい間違っているのではないかとか、思わないと言ったら嘘になる。でもそんなことはこの話には関係ない。宇宙が何億年前からあろうと、実際のところ僕はどうでもいいのだ。
 その話によると、地球ができたのは四十六億年前らしい。宇宙ができてから九十一億年も後のことだ。そのくらい時間がたてば、いくら宇宙がとても大きな生物だとしても、そろそろ自分で勝手に動くほどの年ごろにはなっているであろう。きっとその辺に落ちているものでも食べたのだ。そのせいで、体の中に地球が生まれたのだ。だから、宇宙にとって地球は邪魔でしかない存在であり、敵であると考えられる。ではなぜ今の今まで地球は残ることができたのか。それはただ単に、宇宙が地球に気付いてなかったからである。
 地球が敵であるとはいっても、害がなければ無理に排除しようとは思わないはずだし、そもそも気づくこともないであろう。宇宙がこちらの存在に気付いたのはとても最近のことであると思う。その証拠は、地球温暖化である。ここで地球温暖化の原因は二酸化炭素などのガスだ、と僕に苛立ちを覚える人が出てくるだろうが、別に僕はそれを否定するつもりはない。それどころか、正解だと思っている。そのガスが原因で、宇宙の体は僕たちに気付いたのだ。そのために今までにほぼ同じ程度を保ちつつ、流れ作業で渡してきた、助けにも足止めにもなるオゾン層を増やし、攻撃してきたのだ。体が病原菌を攻撃するのはいたって普通のことである。そして、倒す時に体温が上がるのもあたりまえのことだ。
 でも、ここでまだ助けとなる部分がある。宇宙は自分の中によくないウイルスが入っているのに気付いていないのだ。これは人間でいう、白血球が働いているだけの状態である。では気づいたらどうなるのか。その答えの一つが、俗にいう地球寒冷化であると思う。一つといったのは、僕が地球寒冷化説と地球温暖化説のどちらが正しいかを知らないからである。風邪薬にだって、熱を下げる欧米方式のものと、熱を上げる東洋方式があるのだ。宇宙がどちらを選ぶかなんて問題は、僕にはわからない。宇宙が生命であるなら、感情を持っていても全くおかしくない。これは宇宙生命説を提唱するうえでは仕方ない事柄であろう。とにかく、地球温暖化をはじめとする環境問題は宇宙からの攻撃であり、一度敵と認識されてしまった以上、戦うしかないのだ。さすがに、経済問題や紛争問題は僕ら菌たちの問題であり、宇宙のせいではないと思っているが。
 話が少しずれた。とにかく僕らは宇宙にとって風邪の原因の菌でしかないのだ。そして僕らのように、悪い影響しか及ぼさないような菌は最終的に宇宙から排除されることとなるだろう。それが、地球の終わりである。地球の終わりは、余命数十億年の太陽に飲み込まれるときだという。岩石性の汚染物質として、または太陽の膨張時に耐え切れず蒸発し、太陽の道連れになるのだそうだ。他にも、太陽の膨張時に放出される物質に耐え切れず、太陽系からはじき出され、永遠の極寒地獄となるという説もある。どちらも、太陽が宇宙の白血球として病原菌をやっつける姿に似てはいないだろうか。太陽が白血球、人類が菌。ならば、ブラックホールはどうだろう。もしや、ブラックホールに入れば体外に出ることができるかもしれない。
 僕だって、ブラックホールは重力が強すぎて、原子すら形をとどめることができなくなってしまうようなものであるといわれていることは知っている。だが、宇宙はそんな簡単なものではない。現在ホログラフィック原理という理論が研究されていることはご存じだろうか。これは宇宙が二次元の存在であり、宇宙にあるものはすべてホログラムであるという理論だ。つまり、実質的に天動説を認めていることにもなる。天動説が台頭していたのは主に十六世紀まで、今から五世紀も前のこと。そんな説が今更になって戻ってくる程、宇宙はいまだ解明されていないのだ。ならば、ブラックホールだってどうなっているのかわかっていないといっていい。
 ではブラックホールとは何か。僕はこの宇宙という大きな生命に点在する穴だと考えている。ブラックホールに入り、出口にたどり着くことによって、宇宙の外に出ることができるのだ。そしてすべてを理解することができるのだ。僕はそう思う。地球から一歩出た宇宙の中でさえ、僕たちは生きることができない。なら、宇宙から出てしまっては、宇宙服でも対応できないような世界が広がっているのは当然だ。だから現時点では、すべてを知ることは死も意味する。それでも、僕は知りたいのだ。この世のすべてを。

 長々と語ってしまったが、僕が言いたいのは、宇宙は生命なのではないかということ、そして僕らはその中に生きる菌なのではないかといいうこと、ブラックホールはすべてを知る鍵であるのではないかということだ。
 そして、僕の夢はブラックホールに入り、この世すべてを知ることにあるのだ。
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